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痛!歯がしみる割れる 本当は怖い!知覚過敏 (ためしてガッテン)
[コラム] [情報]
(2018.10.26)
歯が割れる!?歯ぐきボロボロ!?
ある日、冷たい飲み物が歯にしみるようになった2人の男性、
KさんとNさんの体験談。
Kさんは、痛くても歯みがきを一生懸命がんばっていました。
ところが、歯医者さんに行くと「このままでは歯が割れる危険
がある」と告げられビックリ。「歯みがきを控えめにした方が
良い」と言われました。
一方、Nさんは歯みがきを控えめにしていましたが、痛みがひ
どくなるばかり。歯医者さんで診てもらうと「歯ぐきがボロボ
ロ。このままではアゴの骨が溶ける」、そして「もっと歯みがき
するように」と言われてしまいました。
むし歯とは違って、「ちょっと歯がしみるだけ」、というイメージ
の「知覚過敏」なのに、"歯が割れる"、"歯ぐきボロボロ"、
とは一体どういうことでしょう。しかも、全く同じ「しみる」という
症状なのに、2人が言われたことは正反対でした!
実は、知覚過敏には大きく2つの原因があります。そして、その原因
をきちんと見分けないと正しい対処法も分からないのです。
びっくり!歯がしみる理由が見えた!
歯が「しみる」のは、歯の中にある神経(歯髄・しずい)が刺激に
反応するから。でも、神経は表面に出ているわけではないので、通
常、水を飲んだだけで刺激を受けるはずはありません。一体なぜ、
刺激が神経まで伝わってしまうのでしょう?
その理由を研究者に聞くと、「穴があいているから」という答え。
「しみている歯」の表面を電子顕微鏡写真でみると、直径1000
分の1ミリ程の小さな穴が、1ミリ四方に2万個もあいていたのです!
さらにこの穴、なんと歯の神経のところまでトンネル状につながってい
ます。一体どうしてこんなものができたのでしょうか?
実は、この穴は歯に"元々ある"もの。歯の表面を覆うエナメル質と、
歯の神経との間にある層=「象牙質」には、栄養を送るために「象牙細
管」という管がたくさん通っています。これが穴の正体。「象牙質」が
なんらかの原因で表面に出ると、象牙細管が表面に現れてしまうのです。
つまり、知覚過敏の原因は、「象牙質の露出」。でも、象牙質は本来表
面に出ていないもの。なぜ表面にむき出しになってしまうのでしょうか?
知覚過敏の原因その1・歯周病
知覚過敏を引き起こす象牙質の露出。その原因の1つは、歯ぐきにありま
す。
実は、歯ぐきに覆われている歯の根元付近は、エナメル質がありません。
そのため、歯周病などで歯ぐきが下がり、歯の根元が出てしまうと、象牙
質がむき出しになってしまうのです(注)。
つまり、このタイプの知覚過敏は、歯周病のサイン。「しみる」のが嫌で
歯みがきを控えめにしてしまうと、よりいっそう歯ぐきの状態が悪化し、
象牙質が露出、さらに「しみる」ようになる、という悪循環に陥ってしま
います。
歯周病が悪化すると、歯を支える骨が溶けて歯が抜け落ちてしまうことも
ありますし、心筋こうそくや糖尿病など、全身の病気にも悪影響を与える
こともあります。
病タイプの人の対処法
●正しい歯みがき・・・歯みがきで歯こう(プラーク)を毎日取り除く。
(歯科医院で歯みがきの指導を受けると良い)
●歯周病治療・・・すでに悪化してしまった人は、歯科医院で治療を受ける。
注:歯ぐきに覆われている歯の根元部分は、エナメル質のかわりに「セメン
ト質」という薄い層があるが、短期間でなくなってしまうため、すぐに象牙
質が露出してしまう。
知覚過敏の原因その2・くさび状欠損
象牙質が露出してしまう2つめの理由は「くさび状欠損」です。歯の根元部
分のエナメル質と象牙質が大きく削られて、文字通り「くさび状」にえぐれ
てしまう現象です。
「くさび状欠損」は、近年まで「歯のみがき過ぎ」が原因で起こると考えら
れていましたが、最新の研究で、もっと大きな要因があることが分かってき
ました。
それは、歯の「くいしばり」。くいしばると、歯に大きな力がかかり、根元
のあたりにその「ひずみ」が集中します。こうした力が繰り返しかかること
によって、歯の結晶にごく小さなキズが発生。そこを、ゴシゴシみがき過ぎ
ると歯が削れてしまうのです。
かみ合わせが悪く特定の歯に力がかかる人、スポーツ選手、寝ている時に歯
ぎしりをする人などがこの状態になりやすいといわれます。こうした人は、
気付かないでいると歯がパックリと割れる危険性もあるのです。
くさび状欠損タイプの人の対処法
●かみ合わせが悪い人は・・・バランス良くかむよう気をつける。食べる時
以外に上下の歯を接触させない。かみ合わせ治療を受ける。
●歯ぎしりをする人は・・・就寝時にマウスピースをする。
●正しい歯みがき・・・硬い毛の歯ブラシを使わない。みがくときに力を入
れすぎない。
痛みが消えた方が危険!?
知覚過敏を放っておくと「しみなくなる」のはなぜか?
再び研究者に尋ねると、「穴がふさがるから」という答え。
ふさがった穴(象牙細管)の中には、カルシウムなどのミネラルの結晶が詰
まっています。このカルシウムを供給したのは「だ液」と「神経(歯髄)」。
内から、外から協力して穴を封鎖したのです。
こうなると表面からの刺激が伝わらなくなり、知覚過敏はおさまります。
でも、これはあくまでも応急処置。痛みを消すだけで、知覚過敏の原因であ
る「歯周病」や「くさび状欠損」が治ったわけではありません。それどころ
か、痛みを感じなくなったために、気付かないうちにどんどん悪化している
可能性すらあります。
さらに、象牙質はエナメル質より弱いので、露出したままだとむし歯にもな
りやすくなります。このむし歯も、痛みを感じないために、気付かないうち
にどんどん悪化してしまうことが多いのです。
痛みが消えた後こそ、要注意なのです!
象牙質が出たら!歯みがき新常識
象牙質が出てしまっても、「正しい歯みがき」をしていれば、歯をぐんと長
持ちさせることができます。
ポイントの1つは、「食後すぐに歯をみがかない」こと。食事には、お酢を
はじめとした"酸性"のものが多く含まれています。象牙質は酸に弱く、食
事の直後は「軟らかく」なっています。そこを歯ブラシでゴシゴシこすると、
削れてしまう可能性があります。
一方で、食後、少し時間をおくと、だ液が酸を中和し、軟らかくなった象牙
質にカルシウムを供給。象牙質の硬さが戻ってきます。目安はおよそ1時間
といわれています。
以前は、「食後すぐ歯みがき」が常識でしたが、最近の研究では、食べ終わ
ってからの時間はあまり重要視されなくなってきました。むしろ、酸性の強
い食品を食べた直後などは、歯みがきを控えた方が良いとされています。
良い歯みがきのポイント
●回数より質
最低1日1回、特に寝る前の歯みがきはみがき残しなく、完全に歯こう
(プラーク)を取り除く。
●道具を増やす
歯と歯の間もきちんとみがくため、デンタルフロスや歯間ブラシが効果的。
●定期検診
定期的に歯科医院に通うことが大切。目安は半年に1回。(個人差がある
ので、歯医者さんの指導に従って下さい。) (ためしてガッテン取材)